目次
電気設備技術基準の概要と電圧の種類
法規の科目試験では、電気設備技術基準と電気設備技術基準の解釈からの出題が毎回多数を占めます。
ここではこれらの要点を説明します。
○電気設備技術基準
電気事業法にもとづき、事業用電気工作物が維持すべき技術基準を定めた経済産業省令。
正式名称は「電気設備に関する技術基準を定める省令」といいます。
○電気設備技術基準の解釈
電気設備技術基準が定める技術的要件を満たす技術的内容を具体的に示したもので、正式名称を
「電気設備の技術基準の解釈について」といいます。
電圧の種別
「電気設備技術基準」によると、電圧は「低圧」「高圧」「特別高圧」の3種類に区分されます。
交流
低圧:600V以下のもの
高圧:600Vを超え、7000V以下のもの
特別高圧:7000Vを超えるもの
直流
低圧:750V以下のもの
高圧:750Vを超え、7000V以下のもの
特別高圧:7000Vを超えるもの
気圧が高いほど、取り扱いに注意が必要になるため、電気設備には上記の区分にしたがってさまざまな規制が設けられています。
私たちがふだん利用している100Vや200Vの電気は、低圧に区分されます。
また、高圧は市街地の架空電線など、主に配電に用いれれています。特別高圧は、発電所や変電所、送電線で用いられます。
公称電圧と最大使用電圧
送電線や配電線の電圧は、ふつう線間電圧で表されます。また、1つの線路を代表する電圧を「公称電圧」といいます。
長い電線路では、場所によって電圧に変動が生じますが、その線路全体の電圧は公称電圧で表します。
公称電圧は、その電路に加わる電圧の最大値ではありません。電路の「最大使用電圧」は、公称電圧から次のように求めます。
○公称電圧1000V以下:最大使用電圧=公称電圧×1.15
○公称電圧1000Vを超え、500000V未満:最大使用電圧=公称電圧×1.15/1.1
電路の絶縁
電路は大地から絶縁する
技術基準第5条第1項は、電路の絶縁について次のように規定しています。
第5条第1項:電路は、大地から「絶縁」しなければならない。ただし、構造上やむを得ない場合であって通常予見される使用形態を考慮し危険のおそれがない場合、または「混触」による高電圧の侵入等の異常が発生した際の危険を回避するための「接地」その他の保安上必要な措置を講ずる場合は、この限りでない。
このように、電路は原則として大地と絶縁しなければなりません。ただし、保安のために電路の一部を接地する場合や、機器の構造上絶縁ができない箇所は、例外として絶縁しなくてもよいことになっています。
絶縁を判定する基準
電路が絶縁されているかどうかを判定する基準は、使用電圧の種別によって、次のように異なります。
低圧の電路:絶縁抵抗の大きさによる
高圧・特別高圧の電路:絶縁耐力試験による
絶縁耐力試験については、次節で説明するのでここでは低圧電路の絶縁に関する規定を覚えましょう。
低圧電路の絶縁抵抗
低圧の電路の電線相互間、および電路と大地との絶縁抵抗は、開閉器または過電流遮断機で区切ることのできる電路ごとに、下記の値以上でなければならないとされています。
○300V以下:対地電圧150V以下→絶縁抵抗0.1MΩ
○300V以下:その他→0.2MΩ
○300Vを超えるもの→0.4MΩ
ただし、絶縁抵抗の測定が困難な場合は、使用電圧の区分に応じて「漏れ電流が1mA」以下であればよいことになっています。また、図のような低圧電線路中の絶縁部分から漏れる漏えい電流は、最大供給電流の1/2000を超えないようにしなければならないと規定されています。
絶縁耐力試験
絶縁耐力試験の試験電圧
高圧・特別高圧の電路の絶縁性能は、電路と大地間に一定の電圧を10分間加え、絶縁破壊が起きないかどうか調べる「絶縁耐力試験」をパスできなければなりません。
絶縁耐力試験で電路に加える試験電圧は、電路の最大使用電圧ごとに、つぎのように規定されています。
高圧・特別高圧電路の試験電圧
①最大使用電圧が7000V以下:試験電圧は最大電圧の1.5倍
②最大使用電圧が7000Vを超え、15000V以下の中性点接地方式電路:試験電圧は最大電圧の0.92倍
③最大使用電圧が7000Vを超え60000V以下の上記以外の電路:試験電圧は最大使用電圧の1.25倍
なお、ケーブルを使用する電路は、絶縁耐力試験を直流で行うことが認められています。
直流の場合の試験電圧は、交流の場合の2倍にすることが規定されています。
回転機、変圧器などの絶縁耐力試験
絶縁耐力試験は、電路を構成する回転機(発電機や電動機)、変圧器、遮断機、開閉器、計器用変成器などの機械器具についても行います。
試験電圧は、機械器具の最大使用電圧に応じて次のように規定されています。
回転機、変圧器などの試験電圧
回転機(発電機、電動機など。回転変流機を除く)
①最大使用電圧が7000V以下:試験電圧は最大使用電圧の1.5倍
②最大使用電圧が7000Vを超える:試験電圧は最大使用電圧の1.25倍
燃料電池・太陽電池モジュール
試験電圧は最大使用電圧の1.5倍の直流電圧または1倍の交流電圧
変圧器
①最大使用電圧が7000V以下の巻線:試験電圧は最大使用電圧の1.5倍
②最大使用電圧が7000Vを超え、15000V以下の巻線(中性線に多重接地する中性点接地式電路に接続するもの):試験電圧は最大使用電圧の0.92倍
③最大使用電圧が7000Vを超え、60000V以下の巻線(上記以外):試験電圧は最大使用電圧の1.25倍
開閉器、遮断機、計器用変成器など
①最大使用電圧が7000V以下の巻線:試験電圧は最大使用電圧の1.5倍
②最大使用電圧が7000Vを超え、15000V以下の巻線(中性線に多重接地する中性点接地式電路に接続するもの):試験電圧は最大使用電圧の0.92倍
③最大使用電圧が7000Vを超え、60000V以下の巻線(上記以外):試験電圧は最大使用電圧の1.25倍
接地工事
接地工事の目的
電気機器の外箱や鉄台を、接地線で大地とつなぐことを「接地」といいます。
外箱や鉄台には、ふつう電気は通じていませんが、落雷や機器の故障、老朽化などによって電気が漏れ出ると、感電や火災などの危険が生じます。
接地工事を施しておけば、漏れ出た電気は大地に逃げるので、危険を未然に防ぐことができます。
「電気設備技術基準」は、電気設備の設置について次のように規定しています。
第10条
電気設備の必要な個所には、異常時の電位上昇、高電圧の侵入等による感電、火災その他人体に危害を及ぼし、または物件への損傷を与えるおそれがないよう、
「接地」その他の適切な措置を講じなければならない。ただし、「電路に係る部分」にあっては、第5条第1項の規定に定めるところによりこれを行わなければならない。
第11条
電気設備に「接地」を施す場合は、電流が安全かつ確実に大地に通ずることができるようにしなければならない。
接地工事の種類
接地工事には、「A種」「B種」「C種」「D種」の4種類があります。このうちB種接地工事では、主に変圧器の低圧側中性点の接地で、残りのA種、C種、D種は、電動機などの機械器具の鉄台や外箱を接地するものです。
接地抵抗
大地に埋め込む接地極(銅板や炭素棒)と大地との間に生じる電気抵抗を接地抵抗といいます。
接地抵抗の値は、接地工事の種類に応じて、次の規定の値にしなければなりません。
A種接地工事
接地抵抗⇒10Ω以下
B種接地工事
①接地抵抗⇒150/変圧器高圧側の1線地絡電流(A) Ω以下
②接地抵抗⇒変圧器の高圧側(または35000V以下の特別高圧側)と低圧側が混触して、低圧側の対地電圧が150Vを超えたとき、高圧側電路を1秒以内に自動的に遮断する場合
③1秒を超え2秒以内に自動的に遮断する場合
C種接地工事
接地抵抗⇒10Ω以下(低圧電路に地絡が生じたとき、0.5秒以内に自動的に遮断する場合は、500Ω以下)
D種接地工事
接地抵抗⇒100Ω以下(低圧電路に地絡が生じたとき、0.5秒以内に自動的に遮断する場合は、500Ω以下)
接地工事の細目
接地に用いる接地線は、腐食しにくいもので、電流が安全に大地に通じるように、接地工事の種類に応じて次のように規定されています。
接地線の種類
A種接地工事:接地線は引っ張り強さ1.04kN以上の金属線、または直径2.6mm以上の軟銅線
B種接地工事:接地線は接地線は引っ張り強さ2.64kN以上の金属線、または直径4mm以上の軟銅線
C,D種接地工事:接地線は引っ張り強さ0.39kN以上の金属線、または直径1.6mm以上の軟銅線
人が触れる恐れのある場所の接地線
A種またはB種接地工事に使用する接地線を、人が触れるおそれのある場所に施設する場合には、人が接地線に触れて感電することのないよう、次の規定にしたがう必要があります。
①接地極は地下75cm以上の深さに埋設すること
②鉄柱などの金属体に沿って施設する場合は、接地極を鉄柱の底面から30cm以上の深さに埋設するか、鉄柱から1m以上離して埋設すること
③接地線には絶縁電線(屋外用ビニル絶縁電線を除く)、キャブタイヤケーブル、または通信用ケーブル以外のケーブル、のいずれかを使用すること。ただし、地表60cm以上の部分についてはこの限りではない
④接地線の地下75cmから地表上2mまでの部分は、合成樹脂管などでおおうこと
機械器具の鉄台・外箱の接地
電動機などの機械器具の鉄台や金属製外箱には、使用電圧に応じた接地工事を行います。
300V以下の低圧用⇒D種接地工事
300Vを超える低圧用⇒C種接地工事
高圧、または特別高圧用⇒A種接地工事
ただし、次のように感電のおそれがごく小さい場合には、接地工事の省略が認められています。
①直流300V、または交流対地電圧150V以下の機器を乾燥した場所で使用する場合
②低圧用の機器を乾燥した木製の床などの上で取り扱う場合
③人が触れることがない木柱などの上に施設する場合
④周囲に絶縁台を設ける場合
⑤外箱のない計器用変成器がゴム、合成樹脂などで被覆されている場合
⑥2重絶縁の機器
⑦低圧用の機器に電気を供給する電路の電源側に絶縁変圧器(二次電圧300V以下、定格容量3kVA以下)を施設し、その負荷側電路を接地しない場合
⑧水気のない場所にある低圧用の機器に、漏電遮断器(定格感度電流15mA以下動作時間0.1秒以下)付きの電路で電気を供給する場合
電気機械器具の施設
高圧・特別高圧の電気機械器具の施設場所
高圧(または特別高圧)の電気機械器具は、事故になったときの影響が大きいため、一般の人が容易に触れるおそれのない場所に施設しなければなりません。
第9条第1項:高圧、または特別高圧の電気機械器具は、取扱い者以外の者が容易に触れるおそれがないように施設しなければならない。ただし、接触による危険のおそれがない場合はこの限りでない。
具体的な施設場所としては、発電所、変電所、開閉所の敷地内のほかに、以下の場所が「技術基準の解釈」で規定されています。
高圧用の機械器具の施設場所
①周囲にさき、へいを設け、さく、へいの高さと充電部分までの距離の合計が5m以上で、危険である旨の表示をする場合
②地表上4.5m以上(市街地外では4m以上)の高さで、人が触れるおそれがないように施設する場合
③工場等の構内で、周囲に適当なさくやへいを設ける場合
④屋内の取扱者以外の者が出入り出来ないようにした場所
⑤コンクリート製またはD種接地工事をした金属製の箱に納め、充電部が露出しないようにする場合
⑥充電部分が露出しない機械器具を人が容易に触れる恐れのない場所に施設する場合
⑦充電部分が露出しない機械器具を、温度上昇や故障の際に近傍の大地との間に生ずる電位差によって、人畜や他の工作物に危険の恐れがないように施設する場合
特別高圧用の機械器具の施設場所
①周囲にさく、へいを設け、さく、へいの高さと充電部分までの距離の合計を、使用電圧の区分に応じて下記以上にし、危険である旨の表示をする場合
使用電圧:35000V以下
距離の合計/地表の高さ:5m
使用電圧:35000Vを超え160000V以下
距離の合計/地表の高さ:6m
使用電圧:160000Vを超えるもの
距離の合計/地表の高さ:6mに160000Vを超える10000Vごとに12cmを加えた値
②地表上5m以上の高さに施設し、充電部部分が上記以上の高さで、人が触れる恐れがないようにする場合
③工場等の構内で、機械器具を絶縁された箱またはA種接地工事をした金属製の箱に納め、充電部が露出しないようにする場合
④充電部分が露出しない機械器具を人が容易に触れる恐れのない場所に施設する場合
⑤屋内に施設する場合は、取扱者以外の人が出入りできないようにした場所
特別高圧用変圧器の施設
特別高圧用の変圧器は、取扱いに各段の注意が必要なので、原則として「発電所」「変電所」「開閉器みしくはこれらに準ずる場所」にのみ、施設が認められています。
ただし、1次電圧が35000V以下で、2次電圧が低圧または高圧の配電用変圧器については、特例として「変電塔」などに施設できます。その場合には、電線に「特別高圧絶縁電線またはケーブル」を使用し、「開閉器と過電流遮断器」を施設することなどが、「技術基準の解釈」に規定されています。
特別高圧を直接低圧に変成する変成器の施設
「特別高圧を直接低圧に変成する変圧器」は、事故になると特別高圧が低圧側に流れ込んで危険が大きいため、発電所など公衆が立ち入らない場所、混触防止措置や保安上の適切な措置が講じられている場所を除いて、施設が制限されています。
アークを生ずる器具の施設
高圧、または特別高圧用の機器で、動作時にアークを生じるものは、アークから引火するおそれがないように、周囲の可燃物から離して施設しなければなりません。
具体的には、「技術基準の解釈」で次のように規定されています。
アークを生ずる器具の施設
○高圧用のもの
木製の壁または天井その他の可燃性のものから1m以上離す
○特別高圧用のもの
木製の壁または天井その他の可燃性のものから2m以上(使用電圧35000V以下の特別高圧用の開閉器等で、動作時に生ずるアークの方向および長さを火災が発生するおそれがないように制限した場合にあっては1m以上)離す。
過電流遮断機
過電流遮断機の施設
「過電流遮断機」は、一定以上の電流が流れると、自動的に電路を遮断する装置です。「電気設備技術基準」は、必要な個所に過電流遮断機を施設することを義務付けています。
第14条:電路の必要な個所には、過電流による加熱焼損から電線および電気機械器具を保護し、かつ火災の発生を防止できるよう過電流遮断機を施設しなければならない。
このほか「電気設備技術基準の解釈」では、次の箇所に過電流遮断機を施設するよう規定しています。
過電流遮断機の施設場所
○特別高圧変圧器の特別高圧側、または二次高圧側
○低圧屋内幹線から分岐して電気使用機械器具に至る低圧屋内電路で、低圧屋内幹線との分岐点から電線の長さが3m以下の箇所
一方、接地工事の接地線や、多線式電路の中性線および電路の一部に接地工事を施した低圧架空電線路の接地側電線には、過電流遮断機の施設が禁じられています。
低圧電路中に施設する過電流遮断機
「技術基準の解釈」第37条では、低圧電路に施設される過電流遮断機について、以下の種類ごとに規定しています。
低圧電路中に施設する過電流遮断機の性能
ヒューズ
○定格電流の1.1倍の電流に耐える事
○定格電流の1.6倍、および2倍の電流を通じた場合には、規定の時間に溶断すること
配電用遮断機
○定格電流の1倍の電流で自動的に動作しないこと
○定格電流の1.25倍および2倍の電流を通じた場合には、規定の時間内に自動的に動作すること
電動機用の過負荷保護装置と短絡保護専用遮断機(または短絡保護専用ヒューズ)を組み合わせた装置
○過負荷保護装置と短絡保護専用遮断機(または短絡保護専用ヒューズ)を1つの箱の中に納めて施設することなど
非包装ヒューズ
○原則として、つめ付きヒューズでなければ使用しないこと。
その他
○過電流遮断器は、原則として、短絡電流を遮断する能力を有するものであること。
高圧・特別高圧電路中に施設する過電流遮断器
高圧や特別高圧電路に施設される過電流遮断器については、「技術基準の解釈」第38条で以下のように規定されています。
高圧・特別高圧電路中に施設する過電流遮断器
○高圧電路に用いる包装ヒューズは、定格電流の1.3倍の電流に耐え、かつ2倍の電流で120分以内に溶断するものまたはJIS規格に適合する高圧限流ヒューズであること。
○高圧電路に用いる非包装ヒューズは、定格電流の1.25倍の電流に耐え、かつ2倍の電流で2分以内に溶断するものであること。
○電路に短絡を生じたときに作動する過電流遮断器は、短絡電流を遮断する能力を有するものであること。
○過電流遮断器は、開閉状態を表示する装置を有するものであること。
避雷器の施設
避雷器の施設が必要な場所
「避雷器」は、雷電圧による電気設備の損壊を防止するため、高圧および特別高圧電路中の次の箇所に施設することが定められています。
避雷器の施設が必要な場所
○発電所または変電所もしくはこれに準ずる場所の架空電線引込口及び引出し口
○架空電線路に接続する特別高圧配電用変圧器の高圧側および特別高圧側
○高圧架空電線路から供給を受ける受電電力の容量が500kW以上の需要場所の引込口
○特別高圧架空電線路から供給を受ける需要場所の引込口
避雷器の接地
高圧・特別高圧の電路に施設した避雷器には、原則として「A種接地工事」(接地抵抗10Ω以下)を施します。
ただし、高圧架空電線に施設する避雷器については、次のような条件に応じて、接地抵抗の値を規定より大きくできます。
接地抵抗を大きくできる場合
施設場所がB種接地工事が施された変圧器の近くでない場合:接地抵抗30Ω以下
B種接地工事が施された変圧器の近くに施設し、避雷器の接地極をB種接地極から1m以上離す場合:接地抵抗30Ω以下
変圧器のB種接地線と、避雷器の接地線を変圧器の近くで接続し、中間接地線を1つ以上設ける場合:避雷器の接地抵抗を75Ω以下または変圧器のB種接地を65Ω以下
発電所・変電所・開閉所の施設
発電所・変電所・開閉所の定義
発電所、変電所、開閉所は「電気設備技術基準」の中でそれぞれ次のように定義されています。
第1条第3号:「発電所」とは、発電機、原動機、燃料電池、太陽電池その他の機械器具を施設して電気を発生させる所をいう
第1条第4号:「変電所」とは、構外から伝送される電気を構内に施設した変圧器、回転変流機、整流器その他の電気機械器具により変成する所であって、変成した電気をさらに構外に伝送するものをいう
第1条第5号:「開閉所」とは、構内に施設した開閉器その他の装置により電路を開閉する所であって、発電所、変電所及び需要場所以外のものをいう
発電所・変電所・開閉所の立入の制限
発電所や変電所は、危険防止のため、取扱者以外の者の立ち入りが制限されています。
第23条第1項:「高圧又は特別高圧」の電気機械器具、母線等を施設する発電所または変電所、開閉所もしくはjこれらに準ずる場所には、取扱者以外の者に電気機械器具、母線等が「危険」である旨を表示するとともに、当該者が容易に「構内」に立ち入るおそれがないように適切な措置を講じなければならない。
上記に従い、「技術基準の解釈」では、機械器具を屋外に施設する場合と、屋内に施設する場合とに分けて、講ずべき措置を規定しています。
機械器具や母線を屋外に施設する変電所など
○さく、へい等を設けること
○出入り口に立ち入りを禁止する旨を表示すること
○出入り口に施錠装置その他適当な装置を施設すること
さく、へいの高さと、さく、へいから充電部分までの距離の合計は次の通りとします。
使用電圧:3500V以下
距離の合計/地表上の高さ:5m
使用電圧:3500Vを超え、160000V以下
距離の合計/地表上の高さ:6m
使用電圧:160000Vを超えるもの
距離の合計/地表上の高さ:6mに160000Vを超える10000Vごとに12cmを加えた値
機械器具や母線を屋内に施設する変電所など
○堅牢な壁を施設し、その出入り口に立ち入りを禁止する旨を表示するとともに、施錠装置その他適当な装置を施設すること
または、屋外に施設する場合と同様にさく、へいを設け、出入り口に立ち入りを禁止する旨を表示し、施錠装置その他適当な装置を施設する方法でもよいとされています。
架空電線路
架空電線と支持物の施設
空中にかけ渡した電線と、その支持物などからなる電気工作物を「架空電線路」といいます。
以下は、架空電線路の施設に関する規定です。
架空電線路の施設
①架空電線路の支持物は、他の架空電線路(または架空弱電流電線路、架空光ファイバケーブル線路)の電線(または弱電流電線路、光ファイバケーブル)の間を貫通して施設しないこと。
②架空電線は、他の架空電線路(または電車線路、架空弱電流電線路、架空光ファイバケーブル線路)の支持物をはさんで施設しないこと。
③架空電線と他の架空電線路(もしくは架空弱電流電線路、架空光ファイバケーブル線路)の電線(もしくは弱電流電線、光ファイバケーブル)または電車線とを同一支持物に施設する場合は、①②の規定によらないことができる。
また、架空電線の分岐は断線などの恐れがないように、原則としてその電線の支持点で行います。支持点以外の場所で分岐する場合は、電線に張力が加わらないようにしなければなりません。
架空電線路の支持物の昇塔防止
一般の人が電線に触れて感電しないように、架空電線路の支持物は、人が簡単に昇れないようにしておきます。
そのため、取扱者が昇降に使用する足場金具は、原則として「地表上1.8m未満に施設しない」ことが規定されています。
ただし、足場金具を内部に構造できる場合や、昇降防止の装置を施設する場合、さく、へいを設ける場合、山地など人が容易に立ち入る恐れのない場所では、この限りではない。
風圧荷重と支持物の強度
架空電線路の支持物の強度は、電線の引張荷重や、「風速40m/秒」の風による風圧荷重などで倒壊しないことが基準となっています。
「技術基準の解釈」は、支持物の強度計算の適用すべき風圧荷重を「甲種」「乙種」「丙種」の3種に分類しています。
風圧荷重の種別
甲種:風速40m/秒の風によって生じる風圧荷重。風圧を受けるものによって、下記の風圧を基礎として計算したもの。
乙種:電線などの架渉線の風圧荷重は、厚さ6mm、比重0.9の氷雪が付着した状態で、垂直投影面積1㎡当たり490Pa(多導体電線では440Pa)の風圧を基礎として計算。その他の場合は、下記の1/2の風圧を基礎として計算した荷重。
丙種:下記の1/2の風圧を基礎として計算した荷重。
計算の基礎となる風圧
木柱、丸型鉄柱、、丸型鉄筋コンクリート柱、丸型の単柱鉄塔:780Pa
三角型またはひし形鉄柱:1860Pa
鋼菅により構成される四角形の鉄柱:1470Pa
その他腹材が前後面で重なる鉄柱:2160Pa
その他の鉄柱:2350Pa
鉄筋コンクリート柱(丸型以外):1180Pa
単柱(六角形または八角形の鉄塔);:1470Pa
鋼菅により構成される鉄塔:1670Pa
その他の鉄塔:2840Pa
電線その他の架渉線(多導体):880Pa
電線その他の架渉線(その他):980Pa
風荷重は、一般に気候や季節によって変動するので、、「技術基準の解釈」では、運用すべき風圧荷重を次にように規定しています。
風圧荷重の適用
氷雪の多い地方以外 ⇒ 高温季:甲種 低温季:丙種
氷雪の多い地方
低温季に最大風圧を生ずる地方 ⇒ 高温季:甲種 低温季:甲種または乙種
上記以外 ⇒ 高温季:甲種 低温季:乙種
また、人家が多く連なっている箇所では、上記の規定にかかわらず、以下のものに丙種風圧荷重を適用できます。
・低圧または高圧の架空電線路の支持物と架渉線
・特別高圧絶縁電線またはケーブルを使用する使用電圧35000V以下の特別高圧架空電線路の支持物、架渉線、がいし装置、腕金など
支持物の基礎の安全率
安全率は、材料の強度が実際にかかると想定される荷重の何倍まで耐えられるかを表します。「技術基準の解釈」では、架空電線路の支持物の基礎の安全率を、原則として2以上と規定しています。
ただし、以下いずれかに該当する場合は、安全率の計算を省略できます。
基礎の安全率を省略できる支持物
①設計荷重が「6.87kN以下」、全長が「16m以下」の鉄柱、または鉄筋コンクリート柱
②次のいずれかの木柱
a:全長が15m以下の場合 根入れが全長の1/6以上
b:全長が15m超の場合 根入れが2.5m以上
c:水田その他地盤が軟弱な個所では、特に堅牢な根かせを施したもの
③設計荷重が「6.87kN以下」、全長が16mを超え20m以下の鉄筋コンクリート柱で、水田、その他地盤が軟弱な個所以外の場所に設置し、根入れが「2.8m以上」のもの
④設計荷重が「6.87kN」を超え、「9.81kN以下」、全長が14m以上20m以下の鉄筋コンクリート柱で、水田その他地盤が軟弱な個所以外に施設し、以下の根入れをしたもの
,
a:全長15m以下の場合 ⇒ 全長の1/6+30cm以上
b:全長15m超の場合 ⇒ 2.8m以上
⑤設計荷重が「9.81kN」を超え「14.72kN以下」、全長が14m以上20m以下の鉄筋コンクリート柱で、水田その他地盤が軟弱な個所以外の場所に施設し、以下の根入れをしたもの
a:全長15m以下の場合 ⇒ 全長の1/6+50cm以上
b:全長15mを超え18m以下の場合
c:全長18m超の場合 ⇒ 3.2m以上
支線による支持物の補強
木柱、鉄柱、鉄筋コンクリ―ト柱は、「支線」を利用して強度を分担させることができます。ただし、支線を利用しない場合でも、通常の風圧荷重の1/2以上は自力で耐える強度を備えていなければなりません。
支線の仕様は、次のように規定されています。
支線の仕様
・支線の引張強さは、原則として「10.7kN以上」であること
・支線の安全率は、原則として「2.5以上」であること
・支線により線を用いる場合は、直径「2mm」以上、引っ張り強さ「0.69kN/mm^2」以上の金属線を素線とし、素線を3条以上よりあわせたものであること
・地中の部分と地表上30cmまでの部分には、耐食性のあるものまたは亜鉛メッキを施した鉄棒を使用し、容易に腐食し難い根かせに堅牢に取り付けること
・道路を横断して施設する支線の高さは、地表上5m以上とすること。ただし、技術的にやむを得ない場合で交通に支障を及ぼす恐れがなければ4.5m以上(歩道上は2.5m以上)でもよい
・低圧または高圧の架空電線路の支持物の支線で電線と接触するおそれがあるものには、原則として上部にがいしを挿入すること
低圧および高圧の架空電線路
架空ケーブルによる施設
低圧または高圧架空電線にケーブルを用いる場合は、以下のような規定があります。
・ちょう架用線にハンガーを用いて施設すること(ハンガーの間隔は高圧の場合50cm以下)。
・ちょう架用線は引張強さ5.93kN以上のもの、またはd案面積22mm^2以上の亜鉛メッキ鉄より線を使用すること。
・ちょう架用線とケーブル被覆の金属体にD種接地工事を施す事。
電線の種類と太さ
低圧または高圧の架空電線に使用できる電線の種類、強さ、太さは以下のように規定されています。
①絶縁電線
低圧300V以下:引張強さ2.3kN以上のもの、または直径2.6mm以上の硬銅線
低圧300V超:引張強さ8.01kN以上のもの、または直径5mm以上の硬銅線(市街地に施設する場合は引張強さ5.26kN以上のもの、または直径4mm以上の硬銅線)。引込用ビニル絶縁電線は使用不可
高圧:強さ、太さの規定は上記と同じ。高圧絶縁電線、または特別高圧電線に限る
②多心型電線
低圧300V以下:引張強さ3.44kN以上のもの。または直径3.2mm以上の硬銅線
低圧300V超:使用不可
高圧:使用不可
③ケーブル
低圧、高圧ともに強さ、太さについての規定はない
架空電線の高さ
道路を横断する場合
低圧:6m(地表上)
高圧:6m(地表上)
鉄道を横断する場合
低圧:5.5m(レール面上)
高圧:5.5m(レール面上)
横断歩道橋の上
低圧:3m(路面上)
高圧:3.5m(路面上)
その他
低圧:5m(地表上)
高圧:5m(地表上)
低圧または高圧の架空電線は、人や車に危険がないような高さに施設します。
「技術基準の解釈」では、上記の高さが原則として規定されています。
架空電線が他の工作物と接近または交さするような場合は、「保安工事」を行います。
保安工事は、電線や支持物の強度などを、規定に従って通常より強化して施設することをいいます。
架空電線と他の工作物との接近には「第一次接近状態」と「第二次接近状態」の2種類があります。
屋内電路の施設
屋内の電気設備には、エアコン、洗濯機といった家庭用電気機器も含まれます。
これらは人と接する機会が多く、十分な安全を確保する必要があることから、以下のような規制があります。
屋内電路の対地電圧
住宅の屋内電路の対地電圧は、原則として「150V以下」と規定されています。
ただし、定格消費電力2kW以上の電気器具と、それに電気を供給する屋内配線については、以下のように施設することで、対地電圧を「300V以下」にすることができます。
対地電圧150Vを超える屋内の電気機器と電路の施設
①使用電圧は「300V以下」であること
②原則として人が容易に触れる恐れがないように施設すること
③電気機械器具は屋内配線と直接接続すること
④電路に専用の「開閉器または過電流遮断器」を施設すること
⑤電路に地絡が生じたときに自動的に電路を遮断する装置を施設すること
低圧屋内幹線の施設
低圧屋内電路は、引込口(または受電室の配電盤)から分電盤の開閉器、過電流遮断器までの「幹線」と、分電盤から電気機械器具までの「分岐回路」に分かれます。
このうち、幹線については次のような規定があります。
低圧屋内幹線の施設
①損傷を受けるおそれがない場所に施設すること
②電線は、許容電流が電気使用機械器具の定格電流の合計以上であること。ただし、接続される電動機等の定格電流の合計が、他の電気機械器具の定格電流の合計より大きい場合は次の値とする
・電動機等の定格電流の合計が50A以下
電動機等の定格電流の合計の「1.25倍」に、その他電気機械器具の定格電流を加えた値
・電動機等の定格電流の合計が50A超
電動機等の定格電流の合計の「1.1倍」に、その他電気機械器具の定格電流を加えた値
③幹線の電源側の各極に、「過電流遮断器」を施設すること。ただし、次の場合は施設を省略できる
・幹線の許容電流が、その幹線の電源側に接続する他の幹線を保護する過電流遮断器の定格電流の「55%以上」(幹線の長さが「8m以下」の場合は「35%以上」)である場合
・幹線の許容電流が「3m以下」で、負荷側にほかの幹線を接続しない場合
・幹線の許容電流が、その幹線を通過する最大短絡電流以上である場合
分岐回路の施設
低圧屋内電路の分岐回路には、原則として「幹線との分岐点から電線の長さが3m以下」の箇所に、開閉器と過電流遮断器を各極に施設することが規定されています。
ただし、分岐点から開閉器および過電流遮断器までの電線の許容電流が、その電線に接続する低圧屋内幹線を保護する過電流遮断器の定格電流の55%(電線の長さが「8m以下」の場合は「35%」)以上である場合は、「3m」を超える箇所に施設できます。
低圧配線工事
低圧屋内配線工事
「電気設備技術基準の解釈」には、次の13種類の低圧屋内配線工事についての規定があります。
工事の種類
・がいし引き工事:電線を固定したがいしで支持して施設する工事
・合成樹脂線ぴ工事:合成樹脂製の線ぴを天井や壁面に取り付け、その中に絶縁電線を施設する工事
・合成樹脂管工事:合成樹脂製の管内に絶縁電線を引き入れて施設する工事
・金属管工事:金属管のなかに絶縁電線を引き入れて施設する工事。金属管は露出させる場合や、コンクリートなどに埋め込む場合があります
・金属線ぴ工事:金属製の線ぴを天井や壁面に取り付け、その中に絶縁電線を施設する工事
・可とう電線管工事:屈曲できるようになっている電線管の中に、絶縁電線を引き入れて施設する工事
・金属ダクト工事:金属製のダクトの中に、多数の絶縁電線をまとめて施設する工事
・バスダクト工事:バスダクトは、金属製ダクトの中に帯状の裸電線を複数収め、絶縁物で支持したもので、ビルや工場などの大容量低圧配線に用いられます
・フロアダクト工事:屋内のコンクリート床内に、取出口付きの金属ダクト(フロアダクト)を埋め込み、その中に配線用の電線を引き入れて施設する工事
・セルラダクト工事:ビル建築に用いられる波形鋼版(デッキプレート)の溝をダクトとして用い、電線を施設する工事。一方向にしか施設できないので、フロアダクトなどと組み合わせて施工されます
・ライティングダクト工事:照明などのプラグをダクト上の任意の位置に移動できるようにしたもの
・平形保護層工事:平形の絶縁電線を床面のタイルやカーペット下に施設する工事
・ケーブル工事:ケーブル、キャブタイヤケーブルを施設する工事。ケーブル工事ではダクトやパイプ、がいしなどが必要なく、造営材に直接取付けできます
各工事の施設場所
各工事の施設可能な場所や使用電圧についての規定は、次のようになっています。