先日、「NHKが映らないTVならば受信料を払う必要はない」という判決が東京地裁で認められました。当たり前のようにも聞こえますが、これは「NHKを受信しないTVを認める」という側面でとらえる事が出来ます。
まだ2転3転しそうな雰囲気もありますが、NHKの受信料に関する問題がようやく一歩前進したような気もします。
皆さんご存じの通り、日本国民には「NHK放送を受信できる設備」を設置していれば、NHKを見る見ないにかかわらず、NHK受信料を支払う事が法律で定められています。
これは、古い体質がそのまま残っている悪しき事例だと思います。NHKどころかTVすら見ない世代が増えているためです。過去のように全員がNHKを視聴している訳がないのです。
有料のスクランブル放送にすれば済む話ですが、一向に進みません。これが一番納得のいく解決策だと思うのですが。
そこで冒頭に戻りますが、どうやら「筑波大学の准教授」が開発した「NHKが映らないフィルターを内蔵したTV」を原告が使ったところ、「支払いの義務はない」との判決が出たとの事です。
つまり、有料のスクランブルをかけられなくとも、「NHKの受信」さえしない受信機(TVとか)ならば受信料を支払う義務がなくなる可能性があるのです。
それは、「NHKを受信しないTVを認める」事でもあり、今後「NHKを受信しないTV」の発売につながる可能性があるって事です。
それでは、今回の騒動の一連の流れ、TV放送の仕組み、NHK受信料について、を簡単にまとめたいと思います。
目次
始めに
TV放送の仕組み
TV放送は、各放送局で撮影された映像を有線で見晴らしの良い電波塔まで送り、そこで変調(搬送波にデジタル信号を乗っける作業)されて、決められたエリアまで放送波として飛ばします。これはUHFアンテナでの受信の場合ですね。
光TVならば放送局から契約プロバイダへ、BS.CSの場合は、契約会社から衛星へ飛ばして、衛星から放送波を受信します。
※細かな詳細はこちらの記事で簡潔にまとめています。↓
TV内部の仕組み
TV内部は大きく分けて「フロントエンド部」と「バックエンド部」に分けられます。
フロントエンド部では、「チューナー(選局)」、「検波(放送波の取り出し)」を行っています。
バックエンド部では、「スクランブル解除(B-CASカード)」「コーデック(伸張)」等をおこなっています。
スクランブル放送について
スクランブル放送とは、著作権の都合上、デジタル放送番組を「暗号化」した放送波の事を指します。
TVの地上波では、各局共にこの「スクランブル」がかけられており、これを解除するには解除鍵となる「B-CASカード」が必要になるのです。
NHKがよく言われている「スクランブル放送にしろ」ってのは、「B-CASカード」で簡単に誰でも見れるものではなく、有料で放送されるスクランブル放送(一部のBSとかCSですね)の事を指しています。出来るはずですからね、言われて当然だと思います。
今回の騒動の一連の流れ
反NHK住民が訴訟
NHKの受信料の徴収に批判的な意見の持ち主が、2018年10月、筑波大学の准教授が開発したNHKの番組を映らないようにするフィルターがついたテレビを3千円で購入し、自宅に設置し、東京地裁に対して訴訟を起こす。(朝日新聞デジタル)
面白いですね、ここまでするなんてそうとうNHKに恨みでもあるんでしょうか。このフィルターが付いたTVっていうのは、おそらくNHKの放送波をカットするような回路だと思います。あと「開発」と書いてるんで、不正改造にならないんでしょう。まあとにかく3000円って安いですね。
NHK側の反論
NHKは、フィルターや電波の増幅器を使うなどの実験をした結果、原告のテレビでは「NHKを受信できる状態に簡単に復元できる」と主張(朝日新聞デジタル)
これもある意味面白いですね、もう苦し紛れの言い訳にしか聞こえません。これって、まずさっきのフィルターをとっぱらってんじゃないかな、とにかく「簡単に復元」は出来ない気がする。し、そこまでやらねーよ。
東京地裁の判決
判決は「増幅器の出費をしなければ受信できないテレビは、NHKを受信できる設備とはいえない」と判断していた。(朝日新聞デジタル)
これはちょっと意外。なにかとNHKをかばうイメージがあるんでね、まあこの先また判決がひっくり返る可能性もあるけど、とりあえずは「NHK受信料制度」に少し風穴を開けたんじゃないかと思います。
NHK受信料制度について
法律の線引きがあいまい
放送法第64条第1項において、「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」
と、NHK受信料の支払いは、国民の義務として定められています。
ただし、これはもうみなさん言ってますけども、「受信設備の設置」の線引きが曖昧すぎる。
設備はどこまでが該当するのか、設置とはどのような状態なのか、結局は全てNHKが良い方向(受信料を徴収する)へ持っていくためのぼやかした説明にしか見えない。
ところが、今回の判決で1つ、明確になりそうな事があります。
NHK放送を受信しなければ対象外
当たり前のように聞こえますが、肝心なのは「NHK放送にフィルタをかける事が許される」という事です。判決でそう言っているも同然ですから。
つまり、今後TVやその他の受信設備にて、「NHKのみ受信しない」よう設計された機器が開発される可能性があるって事です。
そうなれば堂々と、胸張って「うちは受信しませんから帰ってね」といえる訳です。
まとめ
・有料のスクランブル放送をする気はない
・NHK受信料の古い法律も変える気が無い
・「NHKが映らないTVならば受信料を払う必要はない」という判決が東京地裁で認めらた
・「受信設備にNHK放送フィルタをかける事が許される」と捉えても良い
・今後そういった受信機が開発される可能性あり
ただし、メーカーとNHKの癒着関係がどうか分からないので、その辺りがずぶずぶなら、NHKフィルタTVが発売される事はないかもしれません。
ですがまあとにかく、NHKの受信料に関する問題がようやく一歩前進したような気もします。