目次
電力用半導体素子
パワーエレクトロニクスとは
「パワーエレクトロニクス」とは半導体素子を用いて電力の変換や制御を行う技術の総称です。
代表的な応用例として以下のようなものがあります。
整流器
交流を直流に変換する装置。身近な例では電気製品の電気コードについているACアダプタや携帯電話などの充電器にはいっています。
インバータ
直流から任意の周波数の交流を作り出す装置。家庭用電気製品ではエアコンや洗濯機のモーターを制御したり、蛍光ランプの始動装置として使われます。
直流チョッパ
直流電力を電圧の異なる直流電力に変換する装置。直流電動機の速度制御に利用されます。
電力用半導体素子の種類
電力の変換や制御に用いられる半導体素子には(以下のような種類があります。
ダイオード
p形とn形の半導体を接合した素子。一方向の電流しか通さない性質から、電力用では「整流」に用いられます。
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バイポーラトランジスタ
p形とn形の半導体をpnpまたnpnの順に接合した素子。電力用途では主に「スイッチング素子」として用いられます。
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MOS形FET
金属、酸化膜、半導体で構成される電界効果トランジスタ(FET)。バイポーラトランジスタより高速なスイッチングが可能です。
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IGBT
MOS形FETとバイポーラトランジスタを組み合わせたもので、スイッチングはバイポーラトランジスタより高速で、オン電圧はMOS形FETより低くなります。
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サイリスタ
p形半導体とn形半導体を、pnpnの4層に接合した素子。構造によって逆素子三端子サイリスタ(図)、光トリガサイリスタ、GTOサイリスタ、トライアックなどの種類があります。
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サイリスタ
サイリスタの動作
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サイリスタはp形とn形の半導体を図のようにpnpnの順に並べた構造になっています。
3つの電極はそれぞれアノード(A)、カソード(K)、ゲート(G)といいます。
サイリスタのアノード、カソード間に逆方向電圧を加えてもダイオード同様に電流は流れません。
また、順方向電圧を加えても、ゲートに電流が流れていない状態では電流が流れません。
この状態を「オフ状態」といいます。
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アノード、カソード間に順方向電圧を加え、ゲートに電流を流すと、アノード、カソード間に電流が流れだします。
この状態を「オン状態」といい、サイリスタをオン状態にすることを「点弧」といいます。
また、オフ状態からオン状態に移行することを「ターンオン」といいます。サイリスタはいったんターンオンするとその後はゲート電流をゼロにしてもオン状態が持続します。
この点がサイリスタの大きな特徴です。
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サイリスタをオフ状態にすることを「消弧」といい、オン状態からオフ状態に移行することを「ターンオフ」といいます。
サイリスタを消弧するには電源をいったん切るか、逆方向の電圧を加えてアノード、カソード間の電流を一定以下に制限します。
サイリスタの種類
サイリスタには次のような種類があります。
逆阻止三端子サイリスタ
一般的な三端子のサイリスタ。なお、ゲート端子はp形層にあるものとn形層にあるものがあります。
光トリガサイリスタ
ゲートに電気信号を流す代わりに、光を当ててターンオンできるサイリスタ。
ゲートターンオフサイリスタ
ゲートに負の電流を流すことでターンオフもできるようにしたサイリスタ。
トライアック
電圧がどちら向きでも使える双方向サイリスタ。交流機器で用いられています。
整流回路
単相半波整流回路
交流の電力を直流に変換する回路を「整流回路」(または順変換回路)といいます。
また、交流の正負の波形のうち半波だけを取り出して直流にする回路を「半波整流回路」といいます。
サイリスタを用いた半波整流回路の例を次に示します。
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サイリスタを利用した整流回路では交流電源と同じ周波数のパルス信号をゲート端子に与え、サイリスタをターンオンします。
交流電源の周期ωtがπ~2πの間は逆方向の電圧が加わるのでサイリスタがターンオフします。
そのため、負荷電圧vdは次のような波形になります。
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交流電源とパルス信号の位相差αを、制御角といいます。サイリスタを用いた整流回路では、制御角αの大きさを0~πの間で調整することで、負荷電圧vdの平均値Vdを調整できます。
単相半波整流回路の負荷がインダクタンスを含んでいると、負荷電圧に負の部分が生じ、平均電圧が小さくなります。
そこで図のような負荷と並行にダイオードDを接続します。電源電圧が負の半サイクルになると負荷電流はL⇒R⇒D⇒Lの経路を環流するので、サイリスタがターンオフされ、負荷電圧の負の部分が無くなります。
このダイオードを「環流ダイオード」(フリーホイーリングダイオード)といいます。
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ブリッジ整流回路
交流の正負の波形を両方とも取り出して直流に変換する回路を「全波整流回路」といいます。
全波整流回路にはブリッジ形をした「ブリッジ整流回路」が一般的に用いられます。この回路の例を次に示します。
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電源電圧が正の半サイクルでは、サイリスタTh1とTh4がターンオンし、負荷電流はTh1⇒負荷⇒Th4の経路を流れます。
電源電圧が負の半サイクルになると、サイリスタTh2とTh3がターンオンし、負荷電流はTh3⇒負荷⇒Th2の経路を流れます。
この結果、負荷電圧は次のような波形になります。
電源電圧vをv=√2Vsinωt(V)とすれば、負荷電圧の平均値Vdは次のように求められます。
抵抗負荷の場合:Vd=0.9V×1+cosα/2(V)
誘導性負荷の場合:Vd=0.9Vcosα(V)
三相ブリッジ整流回路
三相交流から1本の直流をつくる整流回路には各相の半サイクルの波形を使う三相半波整流回路と正負の波形を使う「三相ブリッジ整流回路」があります。
サイリスタによる三相ブリッジ整流回路の例を次に示します。
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この回路では各相の線間電圧の最大値を中心とする波形が1サイクル中に6回繰り返して負荷に加わります。
線間電圧の実行値をViとすれば、負荷電圧の平均値Vdは次のようになります。
Vd=1.35Vicosα(V)
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