目次
水力発電
発電の形式
水力発電は水がもつエネルギーによって水車を回転させて発電する方式です。
水のエネルギーは、上流と下流との間に落差を作ることで得られます。
水力発電所は、この落差を得る方法によって、水路式、ダム式、ダム水路式などの形式に分かれます。
水路式発電所
取水口からこう配のゆるい水路を引き、自然の河川との間に落差を作ります。
特徴
○建設費が安い
○ベース負荷に適している
○発電量は小さい
主な設備
○取水口:河川から水を取り入れる箇所
○沈砂地:流入した土砂を沈殿させる人工池
○ヘッドタンク:水路の終端に設置する水槽。水量調節、ごみや土砂を取り除く。
○水圧間:水車に圧力水を送る管路。
ダム式発電所
ダムを建造して上流の水位を高くし、その落差を利用します。
特徴
○発電量が大きい
○ピーク負荷に適している
○工業用水や農業用水などにも利用できる
○建設費が高額
○上流、下流の変化に注意する必要がある
主な設備
○ダム:コンクリート製(重力ダム、アーチダムなど)や岩石を積み上げたもの(ロックフィルダム)などがあります。
○余水吐:余分な水を放流する水路
○魚道:河川を上ったり下ったりする生き物の為の通路
ダム水路式発電所
ダムにより落差を作り、導水路を利用してさらに高い落差を得る方式
特徴
○ダム式より高い落差を得る事が可能
○高額な建設費、上流、下流の変化に注意が必要な部分はダム式と同じ
主な設備
○サージタンク:流量の急激な増大から導水路や水圧菅を保護する為の水槽
水車の種類
衝動水車と反動水車
発電用水車は、その構造から大きく分けて「衝動水車」「反動水車」に分類されます。
衝動水車
ノズルから噴出させた水をランナ(水を受ける部分)にあて、その衝動で水車を回します。発電用ではペルトン水車があります。
反動水車
ランナ内を流水が通過する際、ランナに作用する水の力で水車を回します。水車の種類は「フランシス水車」「プロペラ水車」「カプラン水車」「斜流水車」「デリア水車」などがあります。
水車の特徴
発電用水車の特徴を把握しておきましょう
主要であるペルトン水車とフランシス水車について記します
ペルトン水車
ノズルから噴出したジェット水流をランナのバケットにあてて回転させます。
特徴
○落差が高く、流量が少ないところに向くきます
○負荷の変動に応じて水量を調節出来るため、効率の低下が小さい
主要部
○ノズル:ジェット噴射になります。ノズルの数により単射、2射、4射、6射などの形式があります。
○ニードル弁:噴射量を調節する弁
○バケット:ランナに取り付けたお椀型の部分
○デフレクタ:ノズルとランナの中間にあり、出力が急変した際に一時的にジェットの方向をそらします
フランシス水車
流水がランナの横から流入し、ランナを回転させて軸方向へと流出する反動水車です。
特徴
○低落差から高落差まで幅広く使用できる
○負荷変動による効率の低下が大きい
主要部
○ガイドベーン:負荷の変動に応じて羽の角度を変え、ランナに流入する水量を調整する
○吸出菅:ランナから流出した水を下流へ流しながらランナ出口から放水面までの落差(位置エネルギー)によって水を引っ張り出し、水車の回転力を補助する
比速度
比速度とは、実物の水車と幾何学的に相似な模型水車が、単位落差(1m)において単位出力(1KW)を発生するときの1分間の回転数をいいます。
落差が高い発電所では、水車の比速度が大きいと回転数が大きくなりすぎるため、比速度の小さい水車が適します。
反対に落差の低い発電所では、回転数を得るために比速度の大きい水車が適します。
水車の比速度と適用落差を、種類ごとにまとめると図のようになります。
水車の定格回転数をN【min-1】、最大出力をP【kW】、有効落差をH【m】とすれば、比速度Nsは図の計算式で求められます。
キャビテーション
フランシス水車などの反動水車で、ランナ出口から急激に水が流出すると、減圧によって水中に気泡が発生します。
この現象を「キャビテーション」(空洞現象)と呼びます。
キャビテーションは、ランナの振動や浸食、効率低下の原因となるため、次のような対策をとって防止するようにします。
対策
○吸出菅をあまり高くしない
○水車の比速度をあまり大きくしない
○過負荷運転や部分負荷運転をさける
○ランナに耐キャビテーション材料を使用する
水力発電所の出力
落差と流量
発電所の出力には、主に落差と流量の2つの要素が関係します。
落差は水車が動力として利用する水位の差であり、取水口から放水口までの水位差を「総落差」、
総落差から水車が利用できない損失分を差し引いたものを「有効落差」と呼びます。
また、流量とは単位時間(1秒)あたりに水車に流入する水量の事で、単位はm3/s(立方メートル毎秒)になります。
有効落差=総落差-損失落差(m)
発電所の出力計算
使用水量をQ(m3/s)、有効落差をH(m)とすると、発電所の理論出力は次式で表せます。
理論出力=9.8QH(kW)
この式から水車や発電機で生じる効率低下分を差し引いたものが発電機出力になります。
式は次の通りです。
発電機出力=9.8QHntng(kW)
※Q=使用水量(m3/s)、H=有効落差(m)、nt=水車効率、ng=発電機効率
揚水式発電所
揚水式発電所とは
揚水式発電所は、深夜などにできる余剰電力を使って水を下池から上池にポンプで汲み上げ、ピーク時負荷にその水を流して発電する方式です。
余剰電力を位置エネルギーに変換して蓄えておき、必要に応じて再び電気エネルギーに変換する蓄電池設備の一種と考える事が出来ます。
特徴
○ピーク負荷にのみ使用し、ベース負荷には用い無い
○水車は揚水時はポンプとして利用する(ポンプ水車)
揚水発電所の効率
揚水式発電所の揚水に必要な電力は、次式で求めます。
揚水電力= 9.8QH/npnm(kW)
※Q=使用水量(m3/s)、H=有効落差(m)、np=ポンプ効率、nm=電動機効率
有効落差は、ポンプで水をくみ上げる高さの事になりますので、上池水位-下池水位+損失揚程で求めます。
有効揚程=上池水位-下池水位+損失揚程(m)