目次
白熱電球とハロゲン電球
白熱電球とハロゲン電球はどちらもフィラメントの熱放射によって光を発する照明器具です。
白熱電球のしくみ
「フィラメント」と呼ばれる部品に電流を流すと高い電気抵抗によって2000℃以上の熱を発します。
白熱電球はこのときの「熱放射」によってできる白色光を利用した照明器具です。
フィラメントには一般に「タングステン」という金属が使われます。
高温によってタングステンが蒸発するのを防ぐため電球内にはアルゴン・窒素などの不活性ガスが封入されています。
ハロゲン電球のしくみ
白熱電球の管内にハロゲン元素を封入したものを「ハロゲン電球」といいます。
ハロゲン元素によってタングステンの蒸発による菅壁の黒化を防止することができます。
ハロゲン電球は白熱電球と比べて発光効率が高い、小型にできる、フィラメントの寿命が長い、などの特徴があります。
ハロゲンサイクル
ハロゲン電球では高温に熱せられたフィラメントからタングステンが蒸発すると管内を浮遊するハロゲン元素と化合してハロゲン化タングステンとなります。
この分子は高温のフィラメント付近でハロゲンとタングステンに分離し、タングステンはフィラメントに戻り、ハロゲンは蒸発したタングステンと化合するというサイクルを繰り返します。
ハロゲン電球はこのサイクルによって蒸発したタングステンが菅壁に付着すのを防ぎます。またフィラメントの寿命を伸ばし、点灯温度をより高温にすることができます。
蛍光ランプとHIDランプ
「蛍光ランプ」(蛍光灯)と「HIDランプ」はどちらも放電による発行を利用した照明器具です。
蛍光ランプのしくみ
蛍光ランプのガラス管の中にはアルゴンガスと少量の水銀が封入されています。ガラス管の両端に取り付けた電極をフィラメントで熱すると電極から熱電子が飛び出して管内の水銀と衝突し、紫外線を発します。
ガラス管の内側には蛍光物質が塗ってあり、これに紫外線があたって光を放射します。
蛍光ランプの点灯方式
蛍光ランプを点灯させるには電極をフィラメントで加熱するとともに電極間に高い電圧をかけなければなりません。
そのために次のような方式が利用されています。
スタータ式
スタータ(始動装置)をつかって点灯する方式。スタータとしては点灯菅(グロースタータ)が多く用いられています。
点灯菅ではバイメタルを利用するため点灯までに2~3秒かかります。
ラピットスタート式
電極予熱回路と昇圧回路を安定器に内蔵したもの。点灯菅は不要で約1秒で点灯します。また多数の蛍光ランプを一斉に点灯する場合などにも適しています。
インバータ式
インバータにより電源周波数を高くして点灯させる方式。周波数が高いのでランプのちらつきが少ないこと、即時点灯が出来点灯回路による電力損失が少ない事などが特徴です。
HIDランプとは
高圧水銀ランプや高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプなどの輝度の高い放電灯を総称して「HIDランプ」といいます。
HIDランプは一般に発光効率が高く長寿命ですが始動してから定常状態になるまでに数分の時間が必要です。
高圧水銀ランプ
水銀、アルゴンガスをいれた発光管内で放電による可視光線を出すもの
メタルハライドランプ
高圧水銀ランプとほぼ同じ構造ですがハロゲン化金属を添加し演色性を改善したものです。
高圧ナトリウムランプ
発光管内のナトリウム蒸気が放電により可視光線を出すもの。
ルーメン、カンデラ、ルクス
ここでは光に関するいろいろな量について説明します。照明計算ではこれらが計算の基礎となるのでしっかりと覚えておきましょう。
光束:光源から出る光の量 単位:ルーメン(lm)
光度:ある方向へ向かう光の強さ 単位:カンデラ(cd)
照度:光に照らされる面の明るさ 単位:ルクス(lx)
輝度:発光面の輝きの度合い 単位:カンデラ毎平方メートル(cd/m^2)
光束発散度:発光面が発散する光束の度合い 単位:ルーメン毎平方メートル(lm/m^2)
光束と光度:光の量と強さを表す
光源が発する目に見える光の量を「光束」といいます。ランプから出る光の量は光束で表し、単位には「ルーメン」(lm)を用います。
また、光源がある方向に向けて発する光の強さを「光度」といい、「カンデラ」(cd)という単位を用いて表します。
立体角とは
立体角とはある点から放射状に延びる空間の広がりを表すものです。
立体角の単位には「ステラジアン」(sr)を用います。下図のように点Oを中心とする半径r(m)の球面から面積S(m^2)を切り取ったとき、点Oから面積Sに広がる空間の立体角ω(st)は次の式で表せます。
照度:面の明るさを表す
光源自体の明るさは光束で表せますが、光源に照らされた「面の明るさ」は「照度」という量で表します。
照度は照らされた面の単位面積(1m^2)に受ける光束の量で次式で表します。また単位には「ルクス」(lx)を用います。
輝度:光源のまぶしさを表す
光源をある方向から見たときのまぶしさや輝きの度合いを「輝度」といいます。
輝度は光源の単位面積(1m^2)から出る光度(cd)で表され単位には「カンデラ毎平方メートル」(cd/m^2)を用います。
まぶしさの度合いは光源を見る角度によって異なる場合があります。そのため輝度の計算では光源の実際の面積ではなく、光源をある方向から見たときの見かけの面積が使われます。
光束発散度
単位面積(1m^2)の発光面から発散する光束の量を「光束発散度」といい次式で表します。単位は「ルーメン毎平方メートル」(lm/m^2)です。
完全拡散面の光束発散度M(lm/m^2)と輝度L(cd/m^2)には次の関係式が成り立ちます。よく使われる式なので覚えておきましょう。
照明計算の基本
法線照度と逆2乗の法則
図のように光源の方向と垂直な面の照度を「法線照度」といい次式のように表すことができます。
式が示すように面の照度は光源から面に向かう光度Iに比例し光源との距離rの2乗に反比例します。
これを「距離の逆2乗の法則」といいます。
水平面照度と余弦法則
今度は図のように光源が水平面に対して斜めに入ってくるときの水平面の照度(水平面照度)を考えてみましょう。
水平面の面積をSh(m^2)とし、水平面が受ける光束の量をF(lm)とすれば水平面照度Ehは次の式で表されます。
Eh=F/Sh(lx)
この水平面と同じ量の光束を受け取る、光源に対して垂直な面(法線面)は下図のようになります。
この面の面積をSh(m^2)とすれば、Sn=Shcosθが成り立ちますから、水平面照度Ehは次式で表せます。
式が示すように光源の入射角がθの水平面照度は法線照度のcosθ倍となります。これを「入射角の余弦法則」といいます。
屋内照明の計算
屋内照明の計算
屋内の作業面を必要な明るさで照らすためにどの程度の照明器具が必要になるかを計算で求める方法をマスターしましょう。
床面積A(m^2)の作業面に平均して照度E(lx)の明るさが必要なとき、作業面に要する光束の合計(lx)は、E×A(lx)で表すことができます。
作業面に要する光束(lm)=E(lx)×A(m^2) ・・・式①
一方、照明器具1個が発する光束をF(lm)とすれば、N個の照明器具が出す光束の合計は、N×F(lm)です。
ただし、実際に作業面に達する光束は屋内の色調室指数などによって若干少なくなります。この低下の割合を「照明率」といいます。
また、照明器具は時間が経つとどうしても汚れや劣化で明るさが低下するので、その分もあらかじめ見込んでおかないといけません。
この低下の割合を「保守率」といいます。
以上により、作業面に達する光束の合計(lm)は次のように求められます。
作業面に達する光束(lm)=N×F×U×M ・・・式②
照明器具の個数や明るさは式①と②が等しくなるように求めます。すなわち、次の式が成り立つようにNやFを求めます。
NFUM=EA(lm)
照明器具が単位電力(1W)を利用して発することのできる光束(lm)を、その照明器具の効率といい、単位「ルーメン毎ワット」(lm/W)を用いて表します。
照明器具の定格電力P(W)と効率η(lm/W)がわかれば、その照明の発する光束F(lm)は、P×ηで求められます。
F=Pη(lm)