導電材料と絶縁材料
導電材料
導電材料は、電気の通路として使われる材料で、一般に以下のような性質を備えたものが用いられています。
〇「導電率」が大きい(電気が伝わりやすい)
〇機械的強度が大きい(引っ張りなどに強い)
〇加工が容易である(曲げたり伸ばしたりできる)
〇コストが安い
金属は、もっとも一般的な導電材料です。主な金属を導電率が高いもの順に並べると、次の順番になります。
銀(Ag)→同(Cu)→金(Au)→アルミニウム(Al)→マグネシウム(Mg)→タングステン(W)→亜鉛(Zn)→ニッケル(Ni)→鉄(Fe)→すず(Sn)→鉛(Pb)→水銀(Hg)
これらのうち、価格や加工のしやすさなどの点から、「同」や「アルミニウム」がもっとも使われています。
絶縁材料
電気機器では、電気を絶縁するために、気体、液体、固体にわたるさまざまな絶縁材料が使われています。
気体:空気、窒素、炭酸ガス、六フッ化硫黄(SF6)
液体:鉱油
固体:雲母、木材、紙、ゴム、磁器、ガラス、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル
絶縁材料には、一般に以下の性質が要求されます。
〇絶縁耐力が大きい(高電圧でも絶縁状態を保てる)
〇絶縁抵抗が大きい(漏れ電流が少ない)
〇誘電体質(絶縁体内で消費される電力)が小さい
〇比熱、熱伝導率が大きい
電気製品の絶縁材料は、導体の抵抗損によるジュール熱や、絶縁体自体の誘電体損によって温度が上昇するため、耐熱性に優れたものが望まれます。
磁性材料
変圧器や誘導電動機には、磁束を通すために「鉄心」が使われています。鉄心によって生じる電力損失には、交番磁界によって生じる「渦電流損」と、以下に説明する「ヒステリシス損」があります。渦電流損とヒステリシス損を合わせて「鉄損」といいます。
ヒステリシスループとヒステリシス損
磁性体の磁気的な特徴は、「B-H曲線」と呼ばれるグラフで表すことができます。B-H曲線は、横軸に磁界(H)の大きさ、縦軸に磁性体の磁束密度(B)をとり、その磁性体に生じる磁束密度が、外部から与えられる磁界によってどのように変化するかを表したものです。鉄心のような磁性体のB-H曲線は、一般に図のような形になります。
①磁性体に外部磁界Hを加えると、はじめは磁界が大きくなるにつれ、磁束密度Bも大きくなりますが、やがてそれ以上大きくならなくなります。(この状態を磁気飽和といいます。)
②次に、磁界を徐々に小さくします。磁性体は一度磁気を帯びると、磁界がゼロになってもすぐには元に戻らない為、A→Bのような曲線になります(磁界ゼロの状態で残っている磁束密度を、残留磁化といいます。)
③今度は、逆の極性の磁界を徐々に加えていくと、磁束密度は次第に減少してゼロになります(このときの磁界の強さを保持力といいます)。さらに磁界を強くすると、今度は逆向きの磁束密度が大きくなり、B→Cのような曲線になります。
④再び磁界を小さくし、ゼロにします。磁性体の磁束密度は、逆向きの残留磁化のためゼロにはならず、C→Dのような曲線になります。
⑤①と同様に磁界を大きくしていくと、磁束密度は今度はD→Aのような曲線を描いて大きくなります。
B-H曲線に表れる図のような経路を「ヒステリシスループ」といいます。ヒステリシスループの内側の面積は、磁性体によって熱として消費される仕事に相当し、「ヒステリシス損」と呼ばれます。
鉄心材料
変圧器や電動機の鉄心は、渦電流損やヒステリシス損が小さく、透磁率の高いものが望ましいといえます。また、安価で加工しやすいといった条件も必要です。こうした観点から、鉄心材料には「けい素鋼帯」が多く使われています。また、最近では「アルファモス合金」が新しい変圧器の鉄心材料tろして期待されています。
けい素鋼帯:けい素鋼の薄板で、代表的な磁性材料。積層して鉄心に加工します。板厚を薄くすることで、渦電流損を低減できます。
アルファモス合金:非結晶(アルファモス)構造の合金。鉄損が非常に小さいため、電力損失を低減できます。