目次
同期機のしくみ
交流の周波数と磁界の回転速度が同期している電気機械をまとめて「同期機」といいます。
同期機には同期発電機や同期調相機などの種類があります。
同期発電機の原理
図のように磁界のなかで長方形のコイルを回転させるとコイルの両辺に起電力が誘導されます。
誘導起電力はコイルが半周するごとに向きが逆になる正弦波交流になります。
3組のコイルを120°ずつずらして配置すれば三相交流をつくる三相同期発電機になります。
発電所で実際に使われる同期発電機は下図のようにコイルを固定した電機子に収納し、界磁のほうを水車やタービンで回転させる「回転界磁形」になっています。
同期発電機の誘導起電力
同期発電機の誘導起電力(実効値)は次の式で表されます。
同期発電機のコイルは起電力のひずみを正すため、分布巻や短節巻といわれる巻き方で巻かれています。これらの巻き方によって波形は改善されますが起電力がわずかに低下するため上式のように低下の割合を巻線係数kで表します。
また、同期機の磁界の回転速度を「同期速度」といいます。同期発電機が発生する誘導起電力の周波数は、磁極数をp、同期速度をN(min^-1)とすれば次のように表されます。
電機子反作用と同期インピーダンス
同期発電機の電機子反作用
三相同期発電機に三相平衡負荷を接続すると電機子巻線に電流が流れ回転磁界が生じます。この回転磁界が、界磁がつくる主磁束に影響を与えることを「電機子反作用」といいます。
三相同期発電機の電機子反作用は負荷の力率によって次の3種類があります。
横軸反作用
・交差磁化作用:力率1のとき、界磁の回転方向と同じ側では界磁の主磁束を弱め、反対側では主磁束を強めます。この結果誘導起電力はわずかに低下します。
直軸反作用
・減磁作用:力率が0で、電機子電流の位相が90°遅れているときは主磁束を弱め、誘導起電力を減少させます。
・磁化作用:力率が0で、電機子電流の位相が90°進んでいるときは主磁束を強め、誘導起電力を増加させます。
力率はふつう0~1の間にあるので実際の電気子反作用では横軸反作用と直軸反作用の両方が同時に作用します。
負荷力率が遅れのときは減磁作用、進みのときは磁化作用が働き、誘導起電力が減少または増加します。
同期インピーダンスとは
電機子反作用による誘導起電力の減少(または増加)は電機子回路中のリアクタンスによる電圧降下に置き換えて考えることができます。
子の」リアクタンス(Ω)を「電機子反作用リアクタンス」といいます。
電機子電流によって生じる磁束はほとんどが電機子反作用となりますが、一部は漏れ磁束となり「漏れリアクタンス」(Ω)を生じます。
電機子反作用リアクタンスと漏れリアクタンスをまとめて「同期リアクタンス」(Ω」といいます。
同期リアクタンス
・電機子反作用リアクタンス
・漏れリアクタンス
また同期リアクタンスと電機子の巻線抵抗を合わせて「同期インピーダンス」といいます。
同期インピーダンスを使えば、同期発電機の等価回路は次のように表さられます。
図の等価回路において無負荷時の誘導起電力Eoから同期インピーダンスZによる電圧降下を差し引いたものが発電機の端子電圧Vになります。
Zs=√ra^2+xs^2 (Ω)
また、誘導起電力EOと端子電圧Vの位相差を「内部相差角」(負荷角)といいます。
誘導起電力Eoと電機子電流I、端子電圧V]の関係をベクトル図で表すと次のようになります。
端子電圧Vと電機子電流Iとの位相差Φが力率角となります。
内部位相角と出力
電機子の巻線抵抗raを無視すると上のベクトル図は次のように簡略化できます。
三相発電機の1相の出力は、P=Vicosθ(W)で表されます。上のベクトル図より、
同期発電機の短絡比と同期インピーダンス
無負荷飽和曲線と三相短絡曲線
同期発電機の界磁がつくる磁束の強さは界磁巻線に流す直流電流によって決まります。この電流を「界磁電流」といいます。
無負荷飽和曲線
図のように同期発電機を無負荷で運転し界磁電流と端子電圧の関係を調べます。
界磁電流が一定以上になると界磁鉄心の磁化飽和によって主磁束が増加しなくなるため、グラフは図のような曲線になります。
三相短絡曲線
図のように同期発電機の出力端子を短絡し、界磁電流と電機子短絡電流の関係を調べます。
電機子反作用の減磁作用によって主磁束が飽和せず、界磁電流と電機子短絡電流はグラフのような比例関係になります。
短絡比の計算
図のように無負荷飽和曲線で定格電圧Vnを生じる界磁電流をIf1とします。また三相短絡曲線で定格電流Inが流れるための界磁電流をIf2とします。
If1とIf2との比を「短絡比」といい、次の式で表します。
短絡比は三相同期発電機の特性を表す指標になります。
同期インピーダンスの計算
前節では同期インピーダンスを等価回路から求めましたが、同期インピーダンスは負荷飽和曲線と三相短絡曲線から次のように計算することもできます。
定格電圧Vn(V)は線間電圧なので1/√3倍して相電圧に変換します。これを短絡電流Is(A)で割れば三相同期発電機の同期インピーダンスが求められます。
百分率同期インピーダンスの計算
定格電流Inが流れたときの同期インピーダンスによる電圧降下が定格相電圧の何パーセントかを表したものを「百分率同期インピーダンス」といい次の式で表します。
このように百分率インピーダンスは短絡比の逆数になります。
同期電動機
同期電動機のしくみ
図のように軸のついた磁石の外側で磁石を回転させると、磁石どうしの吸引力によって内側の磁石が回転します。
同期電動機は外側の磁石を回転させる代わりに電機子巻線に三相交流を流して回転磁界をつくり、内側の界磁を回転させます。
図のように同期電動機の構造は同期発電機とほぼ同じです。ただし同期電動機の界磁の磁極面にはかご形の「制動巻線」が付けられており、始動時にはかご形誘導電動機の原理でトルクを得ます。
同期電動機の出力とトルク
同期電動機では同期速度(回転磁界の速度)が回転速度となります。
したがって回転速度Nは次の式で表せます。
内部相差角と出力
同期電動機の1相分の等価回路は次のようになります。
また巻線抵抗raを無視すれば電源電圧Vと電機子電流I、誘導起電力Eとの関係は次のようなベクトル図で表せます。
1相分の出力P1は誘導起電力Eと電機子電流Iの有効分Icosθとの積で表されます。また、ベクトル図よりxsIcosθ=Vsinδなので次の式が成り立ちます。
同期電動機の特性
同期電動機の供給電圧と負荷を一定にして界磁電流と電機子電流の関係をグラフに表すと図のような曲線になります。
この曲線を「位相特性曲線」(V曲線)といいます。
曲線の最低点は力率が1である点を示しており、それより左側が遅れ力率、右側が進み力率になります。曲線は負荷が増加するほど上に移動し、最低点はやや右に移動します。
位相特性曲線が示すように同期電動機は界磁電流を調整することで力率を1に保つことができます。
送電線路に同期電動機を接続し、界磁電流を調整すると送電線路の力率を調整できます。
このような同期機を「同期調相機」といいます。