目次
変電所の役割
変電所とは
変電所は、発電所から送られてきた電気を受け取って、電圧えお変えたり、別の変電所や各家庭に振り分けたりする施設です。
発電所で作られた電気は、50万V,27万5千Vといった非常に高い電圧で送り出されます。
これが100Vや200Vの電気として一般家庭や建物に届くまでには、図のようにいくつもの変電所を経由し、電圧を徐々に下げていきます。
この他にも、変電所は送電電線の保護や電力潮流の調整などを行い、電気を安全かつ円滑に供給する役割をもっています。
変電所の主要設備
変電所を構成する主な設備は下記の通りです。
主変圧器:電圧の降圧、昇圧を行う
遮断器:電力の送電、停止を行う
断路器:送電電線や機器の点検時に、これらを回路から切り離す
計器用変成器:主回路を流れる大きな電圧、電流を測定しやすいように変圧、変流する。計器用変圧器(PT)と変流器(CT)がある
調相設備:電力用コンデンサ、分路リアクトル、調相器などで負荷の変動に応じて力率を改善する
避雷器:送電線や変電所機器を、落雷などによる異常電圧から保護する
変電所は高圧の電気を扱うため、従来は各設備の間隔をあけて配置し、大気による十分な絶縁を行う必要がありました。
しかし最近では、母線や遮断機、断路器、避雷器などを小型の金属容器に収納し、六フッ化硫黄(SF6)ガスを封入した「ガス絶縁開閉装置(GIS)」が主流になっています。
GISは小型で設備面積が少なくて済み、天候の影響も受けないので信頼性が高いのが特徴です。
主変圧器
変電所にある主変圧器は、発電所などから送られてきた電気を降圧、また昇圧して出力します。
変電所のもっとも中心的な存在の装置です。
変圧器とは
図のように、鉄心に2つの巻線(コイル)を巻き、一次巻線に交流電圧を加えると、鉄心に磁束の電磁誘導によって、二次巻線に起電力が発生します。
一次巻線と二次巻線の電圧の比(変圧比)は、一次と二次の巻線の比(巻数比)に応じて変わります。
変圧器はこのしくみを利用し、一次巻線に加えた電圧を変換し、二次巻線から取り出します。
変電所の主変圧器が受け取る電気は、通常「三相交流」とよばれる交流です。三相交流の変圧には、単相の変圧器を3台組み合わせるか、三相変圧器とよばれる変圧器を使います。
三相変圧器のほうが経済的なためよく使われています。
負荷時タップ切替変圧器とは
変圧器の二次側に出力される電圧は、一次側と二次側の巻線の巻数比によって決まります。
「負荷時タップ切替変圧器」は、変圧器の巻線に設けた複数のタップを選択し、巻数比を変えて出力電圧を切り替えられるようにした変圧器です。
変電所の変圧器はタップを備えており、受電側の負荷に応じてタップを切り替え出力電圧を調整できるようになっています。
遮断器と断路器
遮断器や断路器をまとめて開閉装置といいます。
遮断器の役割
遮断器は、平たく言えばブレーカーです。一般家庭にあるブレーカーは、電流が一定以上流れると自動的に電気を止める仕組みになっていますが、変電所の遮断器も、送電線に事故が起こると自動的に動作し、異常を防ぐ働きをします。
また平常時にも、電力の送電や停止、切替を行うときに動作します。
遮断器の種類
変電所の遮断器は、大電流、高電圧の電気を遮断するため、絶縁には特別なしくみが必要です。
また、遮断する際に電極間に発生するアークをすばやく消すためのしくみも用意されています。
遮断器は、これらのしくみの違いによって次のような種類があります。
油遮断器:絶縁油を絶縁、消弧に利用する方式
真空遮断器:真空によって絶縁、消弧する方式
空気遮断器:アークに圧縮空気を吹き付けて消弧する方式
ガス遮断器:アークに六フッ化硫黄(SF6)ガスを吹き付けて消弧する方式
磁気遮断器:磁界を利用して消弧する方式
断路器の役割
断路器は、点検などの際に、機器を回路から切り離したり、別の回路と切り替えたりする装置です。
遮断器異なり、電流が流れている状態では開閉できません。そのため、回路を切り離すには、まず遮断機を開いて電流が流れていない状態にしてから、両端の断路器を開く必要があります。
変圧器の保護・計器用変成器
保護用継電器
変電所には、機器の故障や異常を検出するために、各種の「保護継電器」が設置されています。
保護継電器は、保護区間に設置された計器用変成器から電圧や電流をとり、異常の有無を監視します。
異常を検出すると、遮断機と連動して異常が生じた機器を素早く切り離し、送電への影響を最小限にくいとめます。
変圧器の保護継電器
主変圧器の故障を検出する保護継電器は、電気的方式によるものと機械的方式によるものの2種類に大別できます。
計器用変成器とは
主変圧器や送電線を流れる電圧、電流を監視するために、「計器用変成器」が設置されます。
送電線の電気は高電圧、大電流なので、直接計器を接続して測定、監視することができません。
計器用変成器は、電気を測定しやすい電圧、電流に変成して、計器や保護検電器に与える働きをします。
計器用変成器には「計器用変圧器」や「変流器」があります。
計器用変圧器(PT)
主変圧器や送電線の電圧を、110V程度の電圧に変換します
変流器
変流器は、図のように中心の導体に一次電流を流すと、鉄心に磁束が生じて、鉄心に巻いた巻線に電流が流れる事を利用した装置です。
変電所にある変流器は、主変圧器や送電線の電流を5A程度に変換し、計器や保護検電器に送ります。
なお、変流器の二次側を開路にすると、一次側の電流により、二次側に高電圧が発生するため、変流器の二次側は必ず閉路の状態で使用します。
調相設備
送電線路の無効電力を制御することを「調相」といいます。
その為の機器を調相設備といい、変電所には主に「電力用コンデンサ」や「分路リアクトル」が用いられています。
力率改善
有効電力と皮相電力、無効電力の関係は、図のような電力ベクトル図で表す事ができます。(※2020/6/21 図に誤りの指摘を頂きましたので修正いたしました。【皮相電力と有効電力の単位がテレコになっていました】)
角度θは、負荷にかかる電圧と電流との位相差を表しています。またcosθ(有効電力/無効電力)を力率といいます。
位相差θが大きくなると、力率cosθは小さくなります。負荷の力率が低いと、送電電力に無効分(無効電力)が増え、供給設備の容量(皮相電力)を大きくしなけねばなりません。
反対に、力率が1に近づけば無効電力が減り、電力を効率よく供給できるようになります。これを「力率改善といいます。
力率には「遅れ」と「進み」の2種類があり、電流の位相が電圧より遅れている場合には遅れ力率、逆の場合は進み力率となります。
供給電力に対する負荷が高い場合には、一般的に遅れ力率となり、送電線路の電圧降下が生じます。
また、深夜帯などの負荷が小さいときには、一般に進み力率となり、送電線路の電圧上昇が生じます。
電力用コンデンサ
電力用コンデンサは、重負荷時の遅れ力率を改善し、無効電力の軽減や、送電線路の電圧降下を抑える装置です。
図のように、交流回路に負荷並列にコンデンサを接続すると、回路に流れる電流の位相が進みます。電力用コンデンサはこれと同じ原理で、送電電流の位相を進め、力率を改善します。
力率が改善すると、送電線路を流れる無効電力は図にように低下します。電力用コンデンサの容量は、この無効電力の低下分で表し、単位にはvar(バール)が用いられます。
分路リアクトル
分路リアクトルは、電力用コンデンサとは逆に、負荷が軽いときの進み力率を改善し、電圧上昇を抑える働きをします。
分路リアクトルは、電力用コンデンサとは逆に、負荷が軽いときの進み力率を改善し、電圧上昇を抑える働きをします。鉄心にコイルを巻いた構造の装置で、外見は変圧器とよく似ています。
その他の調相設備
電力用コンデンサや分路リアクトル以外の調相設備には、次のような種類があります。
静止形無効電力補償装置:電力用コンデンサと分路リアクトルを組み合わせ、半導体素子を用いて制御性を高めたもの
同期調相機:同期電動機の一種で、海自電流の大きさによって、電力用コンデンサや分路リアクトルと同じん働きをします。コンデンサやリアクトルに比べると高価になるため、現在の変電所では用いられていません。
力率改善の図で間違いがありますよ。
皮相電力の単位と有効電力の単位が逆ですよ。
(通りすがりの電験3種保持者)
ご報告ありがとうございます。指摘のありました箇所は修正させていただきました。